出版社“本”ができるまで

出版社の仕事~企画から製本までの流れ~

本屋の店頭には、人々の多様な情報ニーズに応じて、文芸書やファッション誌、趣味の本、参考書、辞書、漫画…さまざまなジャンルの単行本や雑誌がならんでいます。こうした出版物は、主に出版社で企画・制作されています。では出版社では、実際にどのような流れで出版物―“本”―が生み出されているのでしょうか?

出版社内では“本”ができるまでに、さまざまな業務に多くの人たちが関わっています。もしあなたが“本”づくりに興味があるなら、これからご紹介する「出版社の仕事」の流れをとおして、自分が携わりたい業務を見つけてください。

●出版社で働く人たち
編集セクションの仕事

◆書籍・雑誌編集者

まず書籍や雑誌について、どんな内容・特集にするか企画を立案します。そして、内容に適したスタッフを選定します。記事に関しては、そのテーマに適したライターに原稿を依頼。ファッション誌であればモデルやスタイリスト、衣装を提供してもらえるアパレルメーカーを探します。カメラマンやイラストレーター、デザイナーにも仕事を依頼しなくてはなりませんし、撮影日時のセッティングもします。編集者の仕事は、多くの人手が携わる編集作業において個性豊かなスタッフをとりまとめる“コーディネーター”の役割なのです。

◆ライター・執筆者

出版社に所属しているかフリーランスか、どちらかの立場が一般的です。依頼を受けて記事を作成するという仕事ですが、取材を行うことも多くあります。店舗や人物について取材を行う場合は、相手が話しやすい雰囲気をつくったり質問を投げかけたりと、インタビュアーとしての能力も求められるのです。事件記者なら機動力・観察力がなければ良い記事は書けません。事件を追うジャーナリストから、流行を紹介する雑誌ライターまで、その記事内容はさまざま。世間全体に通じていることも大切ですが、音楽ライターや美容ライターなど専門分野を持って活躍する人は、ジャンルについての深い知識を仕入れる時間や行動も必要です。 この仕事に役立つ資格「日本漢字能力検定」「日本語文章能力検定」はこちら

◆DTPオペレーター

出版社内にDTP専門の担当者がいる場合もあれば、編集者自身がDTP作業を行う場合もあります。またDTP制作会社に外注することもあります。DTPとは「Desk Top Publishing」の略。印刷の前工程である版下(ゲラ)制作の作業を、コンピュータを使い行います。DTPオペレーターは、編集者の指定どおりに、テキストの流し込みや文字の大きさ・色・フォントの調整、画像も含めたレイアウト作業を行います。

◆校正者

出版社内の校正部署で校正を専門に行っている場合もあれば、著者や編集者自身が校正を行っている場合もあります。ほかにも、在宅校正者やフリー校正者などに依頼を出すこともあります。校正では「校正記号」とよばれる専用の記号で、書籍や雑誌などの誤字脱字や体裁上の不備を修正します。また図版や写真などのデザインや発色のチェックもします。校正は数回にわたって行われるのが一般的で、最終校正を終えたものを「校了」といいます。校了前には必要に応じて著者自身による「著者校」も行われます。

編集セクションの仕事
出版社内には、編集セクション以外にも、販売部や宣伝部、営業部、経理部、総務部、財務部といった一般企業と同じようなセクションがあります。

◆イラストレーター

◆デザイナー

◆モデル

◆スタイリスト

◆カメラマン

●制作工程
基本的には1冊の書籍・雑誌に対して、ディレクションをするのは1人の編集者です。この編集者の指示のもと、各作業が分担して進められます。

では、以下のフローチャートで制作工程をみていきましょう。

1:企画

企画を立てるにあたって、まずは“本”の販売状況や読者状況のリサーチを行います。世間で話題・人気になっているものや、どのようなテーマに関心がもたれているのか調査しながら、売れる“本”の企画を練ります。また“持ち込み原稿”(著者や編集プロダクションによる企画案)を採用するケースもあります。

2:執筆依頼、取材・撮影

企画が決定すると、その企画内容にあわせて、執筆依頼をします。企画内容に精通した人物や、関連本の執筆経験者などから執筆者を決定します。また企画内容に応じて、取材先の選定やカメラマンの選定なども行います。企画書をもとに執筆者と念入りに打ち合わせをして、執筆が始まります。原稿締め切りなどのスケジュール管理も大切な編集者の仕事です。

3:原稿整理

執筆者から原稿が上がってきたら、原稿整理を行います。企画書に沿った執筆内容になっているか確認し、もし加筆や修正の必要があれば、あらためて執筆者に依頼します。次に用字・用語の表記を統一します。また、難解な漢字に対しては必要に応じてルビ(よみがな)をふったり、語尾の統一なども行います。そして台割、割付の作成をします。
台割:1冊の本の中で何ページに何がどれくらい盛り込まれるかを記入したもの。印刷物の「設計図」のようなもの。
割付:1ページごとに、その紙面に入る文字や写真・イラストなどの配置を記入したもの。

4:入稿

完成した原稿(データ原稿)をDTPオペレーターに引き渡します。DTPオペレーターは、編集者の指定どおりにテキストの流し込みや文字の大きさ・色・フォントの調整、画像も含めレイアウト作業を行い下版(ゲラ)を作成します。編集者は指定どおりに作業が行われたかを確認します。

5:校正

原稿や版下(ゲラ)として上がってくる都度“文字”や“図版”の校正が行われます。誤字脱字や体裁上の不備などをチェックします。校正には、校正紙(校正ゲラ)で行う場合とパソコン画面上で行う場合があります。数回にわたる校正指示とその修正が行われた後「校了(責了)」となり、印刷会社へ入稿されます。
校了:修正箇所がまったくなく最終校正を終えた場合、最終校正紙の余白に「校了」と朱記する。
責了:修正箇所はあるけれど印刷会社の責任で修正・確認してから印刷する場合、最終校正紙の余白に「責了」(責任校了)と朱記する。

6:印刷・製本

印刷会社へは、印刷・製本の際の必要事項を記入した「印刷指示書」を渡します。“本”のタイトル(雑誌などの場合は号数なども)を記入して、判型(A4やB5など)・数量、紙質(上質紙やコート紙など)、製本方法(上製・並製、中綴じ・無線綴じ・平綴じ)などを指定します。製本方法により、その“本”の見やすさや使いやすさなどが変わってくるので、“本”の質を高める意味でも、製本方法はとても重要になります。この作業は編集者が行うこともあれば、製作部といわれる部署の担当者が行うこともあります。
●出版業界の将来性は?
現在の出版業界は、“活字離れ”などの影響をうけ、必ずしも好調とはいえない状況です。しかしながらここ最近は、紙媒体をデジタル化した「電子出版物」や、10代の若者を中心に人気の「ケータイ小説」、あるいは電子メールを利用して定期的に情報を届ける「メールマガジン」など、電子媒体を活用した取り組みや、従来にはなかったジャンルの雑誌を創刊するなど、新たな方向性を見出しつつあります。

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